2017年7月10日

2016年第2回(通算第14回)脳科学関連学会連合将来構想委員会

【議事録】

日時

2016年5月25日(水曜日) 10:00-11:00

場所

ネット会議

出席者

伊佐先生、山森先生、池谷先生、岡本先生、松田先生、岡部先生、鍋倉先生、
川人先生、望月先生

傍聴

横田室長、姜室長代理、星屋副主幹、柴田、道本、金居

議事

1. 脳の情報処理の理解とその応用による社会貢献

○伊佐先生より経緯、改定案についての説明

2-1-1 認知症、うつ病に代表される精神・神経疾患の克服に向けた取り組み→「融合脳」
2-1-2 脳の機能回復・代償・補完の実現による社会貢献の取組→「BMI技術」

2-1-3 脳の情報処理の理解とその応用に向けた取組
→この部分を予算化するための脳科学委員会での提案を伊佐先生が作成。
 3月28日の脳科学委員会でプレゼンを行い、岡部先生、松田先生、岡本先生が出席されていた。伊佐先生がそこでの意見を反映した改訂案を作成。脳科連将来構想委員会で検討したうえ6月7日再度脳科学委員会でプレゼンを行う。脳科連将来構想委員会としての大枠を示したい。

  1. 過去の経験から種々の脳内モデルを構築するメカニズム(記憶の形成)
    →理研からの提案を意識したもの。過去の経験から脳内モデルを作る。外界の変化に対して脳内モデルとの間で、脳内シミュレーション、その中で報酬や罰の予測をする。その過程には内的環境の変化、社会的環境、薬物アルコール等が影響していて、その確率的な変動をいろんな方向にゆらぎをさせる、病気との関係でも重要。
    →基礎的なものから応用・臨床までの幅広い研究内容。
  2. 各回路モジュールを統合し、創造的意思決定を行う機構の研究(意思決定)
    →脳の情報処理の最も重要な部分。脳内シミュレーションの結果をもとに意思決定をしていく過程、世の中の複雑な過程の中で、うまくいけば適切な行動選択、よくない可塑性を誘導してしまうと 行動決定の障害、衝動性、依存、摂食障害、PTSD等を誘発する。
    →脳科学委員会ではあまり出口を考えなくてよいという意見、文科省もそう考えてきている。今回については基礎科学に取り組む。
  3. 汎用人工知能につながる多様な状況への適応機構に関する研究
    →人工知能にかかわるプロジェクトはいくつか出てきており、1、2の中にビッグデータ、機械学習はおのずと入ってくるので今回提案は控える。

(松田)現在、国際連携をキーワードとして今年度の調整費を行っており、数週間以内に決定する見込みで、このようなプロジェクトが採択される可能性がある。今回は設計図を作ってゴールを見据えた基礎研究を行うということを示す必要がある。ここでの意見を踏まえて修正した後の脳科学委員会でのプレゼンを文科省が参考にし、プロジェクト案を作成していく。調整費の枠と来年度の概算要求に向けてのプロジェクトの提案という2つある。現在は潤沢に予算がとれるわけではなく、一つのプロジェクト10億円以下で考えなければならない。記憶と意思決定を2つ同時に出すと、2つを同時にすることはできない。まずはどの部分から行うか優先順位を考えてプレゼンしたほうがよい。

(伊佐)調整費については早い段階からAMEDより相談を受けていた。調整費は単年度。6月、7月に公募し、平成28年度調整費をつける。平成29年度以降はそれを膨らませて10億円くらい。
調整費はこれまでの脳プロを侵食しないか。

(松田)しない。

(伊佐)このプロジェクトの概要について戦略的側面からどういう順序で考えていくか合意・コンセンサスを得たい。

(岡本)計画はよいが、1の記憶は理研からの提案とおっしゃったが、理研が提案したものはもっと包括的なプランで、記憶だけではない。記憶と意思決定は区別しにくく、重複している。話を進めていく過程で変な切り分けが行われないようにすべき。

(岡部)調整費で計画の一部が実現するかもしれないが、調整費は単年度で、そのあとどうつなげていくかが重要。次回の脳科学委員会では広めのスタンスで話してもらったほうが自由度が残る。脳科学委員会で安西先生から、説明の中で使われている用語に定義の不明瞭なものが多く、整理をしたほうがいい、という意見があった。神経科学の研究者は理解できてもほかの分野の人から見ると適切ではない印象を与えることがあり、次回は慎重にしていただいたほうがいい。

(伊佐)「ゆらぎ」が別のものを想像させることや、ストレスは外的なものだという方もいる。言葉の問題はサイエンスの発展に応じて変わっていくと思う。脳科学委員会は外部の分野の方も多いのでそのあたりが難しい。

(岡本)階層並列的という用語の意図は?脳は並列処理もある。

(伊佐)あいまいなところがあったかもしれない。

(池谷)【音声不明瞭】

(川人)すすめていただいている案でよいと思う。人工知能では経産省、文科省、総務省、理研のAIP、クレスト公募始まった。融合脳の研究者の話で、審査委員会では何も言われないのに、計画を出す段階で官僚レベルが出てくると嘆いていた。

(鍋倉)岡部先生の意見に賛成。調整費で方向性を出し、次の概算要求でライフ課、AMEDとして、向こうが作りやすい形で残しておく。調整費がつかなかった場合も考えておく。

(望月)人工知能は全く入らないのか。

(伊佐)人工知能という言葉を入れるのは賢明でないと思うが、個人的な意見では数理モデルを作るということは残し、モデル分野で手法として人工知能を使うことはあるのではないかと思う。

(望月)調整費、概算要求もいいバランスで載せてほしい。両方とも確定していないということで難しいかなと思う。

(山森)ストレスが外的なものだという考えは違う。例えば最近内閣府が発表した自殺については、病気が理由となっているものが7割。身体的病気、精神的病気という理由が半々ずつ。伊佐先生が言ったように新しい概念を少しアウトサイド周辺の領域含めて理解していただくように説明するというのは大事だと思う。

(伊佐)まとめると、振興調整費の部分は6,7月公募2億円くらい。その後、文科省とAMEDはそれを膨らませて10億円くらいの概算要求をしたいと考えている。2億円の振興調整費の部分をどこからスタートすべきか。入口に近いところと出口に近いところ。将来的な予算の獲得を考えると全部ここに含めてしまうと取りにくい。個々の研究者が両方に出せるが、外から見たときにプロジェクトの目標が違っているように見えることが必要。入口から出口まで含めて概算要求に持っていくのか、出口よりのところにプロジェクトをつくっていくべきか。振興調整費で最初2億をつけるとしたらどこから始めるか、それ以外のテーマとして、3つ4つくらいほしい。我々が言えるのはそのくらいではないか。
2つの並びどうするか、縦方向でより基礎的なところから振興調整費でどのへんから始めるか

(池谷)【不明瞭】

(岡本)意思決定はよいと思うが、実際には海馬・偏桃体の相互作用によって意思決定が行われるので、絵を書くときは、もう少し脳の広い部分を入れておいたほうがいいと思う。

(伊佐)入力側も組み込むということで。今回は出口に重きを置いたところで振興調整費を取りに行くというところで合意していただければ。

(岡部)逆の意見で、回路の絵をあまり強調しないほうが良いと考える。内的環境、外的環境をもっと書き込んで、単に回路研究でないという絵にしてほしい。
今後が不明なので、回路だけにしておくと、この部分が評価されないと何も立たなくなるので、内的環境、外的環境のほうも大きくしてもらいたい。回路研究だけではない研究も含まれるという風にしたほうが良い。回路のダイアグラムを細かく書いて情報処理がわかっていると説明すると、本当にそんなにわかっているのかという疑問が出てくる。絵を書くのであればどのくらい検証されているかを書かなければ、よくない印象をもたれるのではないか。回路の中で何がわかっていない部分を書いて我々はここを調べたいと書いたほうが、ほかの分野の人にはフェアな印象をもってもらえるのではないか。

(伊佐)そういう図にしたい。

(岡本)意思決定、行動選択を扱う際に、ニューロエコノミーなど脳科学を踏まえたうえで人の高次機能を研究するという部分もある。これは回路的に書いてあるので、そういうイメージがこの研究計画から浮いてこない。

(伊佐)動物実験が中心的に考えたスキームになっているので、もう少し臨床でないヒトのMRI研究が入りやすくするというのは重要なポイント。

(??)タイトルを見ると出口は社会貢献。社会貢献がどうなのか、脳科学委員会としては把握しにくいのではないか。

(伊佐)自殺の予防やギャンブル、依存症等まとまって書いていないところもあるので、修正したい。振興調整費で限定的な枠からまず出して、概算要求がそれを基盤にしていろんなポイントまでを加えていくべきだと思う。個人的意見だが、振興調整費では基本的な基礎研究を1年前から始め、次に破たんのメカニズムなど、より広く、動物と人を比較し、モデル化して、後から概算要求として付け加えることができればよいと思う。
先に始めるもの、後から行うものについて、出し方の順番はどうか。

(鍋倉)科研費改革で、心理と脳科学は現段階では難しいということで、認知と脳科学はコミュニティとしては難しい。今回の意思決定がひとつの突破口になるのではないか。そういう意味では、出口の意思決定は見せる必要があるが、あまりにも回路に偏らない。最終的にストレス、対人となると心理系の人たちとのコミュニケーションが非常に重要になると思う。あくまでもAMEDなので基礎研究と言いながら出口がかなり重要視されると思う。見せ方としては単に記憶というよりは意思決定をみせるのであれば、心理の安西さんなどを説得するような見せ方が必要である。

(伊佐)人の研究も時間がかかるので高次的なところを中心に最初見せて心理の人も加われるという大枠の枠組みを作り、2年目以降は緻密な回路の解析、破たん、病気のメカニズムにつながる研究、モデルなど。1年目には人の研究を入れるように考える。

(岡部)学会連合からの発表なので、1年目、2年目はライフ課やAMEDが考えることである。我々は、このような研究計画を行うのであれば戦略としてどのような研究を先行し、どのような形で広げることが最終的なゴールに最もスムーズにたどり着けるのか、ということだけを言えばいい。
 その結果、中核となる行動選択の神経回路についての研究を前倒しして、それに付随して広がりを持たせるための研究として、いろんな動物種で行動選択に関する回路を比較する研究や、人の研究につなげてストレスオートや社会環境との話を広げるとか、AIに関しても可能性を切り捨てる必要はなくて、行動選択、神経回路の研究をもとにして新しいAIの基礎になる論理やアルゴリズムができる発展性もある、等言っておくとレパートリーが増え、ライフ課が取捨選択できていいのではないか。

(伊佐)心理学会からの将来構想委員会委員がいないのは問題かもしれないと思った。岡部先生が言った内容を脳科連からとして提案をする。

(岡本)AMEDのサポートのGやバイオリソース、両方とも実用的な出口には関係ないプロジェクトである。出口にかかわっていなければAMEDがサポートしないということはない。
人の出口から始めるというとそこまでたどり着いていないものはダメだということにならないか。このプロジェクトは人の意思決定の仕組みを知ることがコアだということであればそこを明確に伝えるべき。

(伊佐)入口がすべて人だけではなく、人も含めて意思決定のメカニズムを行うというもの。
今週末に脳科連評議員会があるので、実質的な将来構想委員会はこれが最後かと思う。6月7日くらいまでに今日の議論を組み込んだプレゼンを改訂し、今日の簡単な議事録とともに先生方に6月7日までに送る。その時点では次の将来構想委員会は立ち上がっていないと思うのでもう少し活動していく。その進め方でよいか。今日の議論を踏まえた改訂版を出して脳科学委員会に臨みたいと思う。次は期が変わって将来構想委員会がリセットされるが、プロジェクトの立ち上げで大事な局面でしたが、脳プロ続き、JST、革新脳さらに発展する方向でそこに多少寄与できたのは先生方のおかげ。2年間ありがとうございました。

以上