ご挨拶

2023年1月より脳科連の新代表に就任しました高橋良輔です。これから2年間、副代表の岡野栄之先生(日本神経化学会/慶應義塾大学)、加藤忠史先生(日本生物学的精神医学会/順天堂大学)とともに、今後2年間脳科連のミッションを果たすべく務めさせていただきます。

まず簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は1983年京都大学医学部を卒業し、脳神経内科医としてキャリアをスタートさせました。しかし神経変性疾患に有効な治療法がきわめて限られている現実に直面し、卒後7年目の1989年に東京都神経科学総合研究所に入職し治療につながる研究をめざし、神経栄養因子の基礎研究を開始しました。その後米国留学(1995年-1997年)では細胞死の研究に従事、1999年から理化学研究所脳科学総合研究センター(BSI)で研究室を主宰する立場となり、パーキンソン病とALSの分子メカニズムの研究を推進、2005年からは現職である京都大学医学研究科臨床神経学(脳神経内科)教授として主としてパーキンソン病とその類縁疾患の診療と研究に携わっております。私はこのように基礎と臨床を往復する経歴の中から、疾患のメカニズム・治療法開発研究の推進のためには臨床医学だけでは不十分で、基礎神経科学の発展と基礎・臨床の緊密な連携が不可欠であることを学びました。学会活動面ではこれまで日本神経学会、日本神経科学学会、日本自律神経学会、日本認知症学会、日本神経精神薬理学会の理事を務めてまいりました。さらに脳科連では運営委員・副代表を経験し、現在日本学術会議「脳とこころ分科会」委員長も務めております。国際的にも国際パーキンソン病運動障害疾患学会(MDS)の Scientific Issues Committeeのチェア、そしてアジアオセアニア神経学連合(AOAN)の副会長も務めており、国際貢献・国際協調にも努力しております。

さて、脳科連の概要と目的はホームページで以下のように紹介されています。「我が国の脳科学の基礎・臨床研究者を代表し、脳科学の発展ならびに普及を通して社会に貢献することを目的として、国内の基礎・臨床脳科学関連19学会によって設立されました。本連合は、学協会活動に関する情報連絡の便宜を図るとともに、必要に応じて脳科学コミュニティの意見を集約し、政府や国民、学協会等に対して積極的に意見を表明していきます。」すなわち脳科学界の意見を集約して力強い声として世間に訴えていくことが脳科連の課せられた最も重要なミッションです。

現在は会員学会が30に増え、それに伴う活動も大変活発になっております。伊佐正先生が代表を務められた2020年から2022年は大きな変革の時期でした。事務局をボランティアで引き受けていただいていた理研から(公財)農学会に委託することになりました。また産学連携を推進する目的で産学連携諮問委員会(池田和隆委員長)が設立され、26もの企業・団体が連携法人会員に加わっていただきました。学界と企業が連携して脳科学界の共通の研究推進のビジョンを国や研究費配分機関に訴える体制が整ったことは画期的です。
今後も健全なアカデミアと企業の関係を保ちながら、我が国における基礎脳科学の発展と、精神・神経疾患の克服に向けた脳科学研究の推進に脳科連が大きな役割を果たせるよう、努力してまいります。会員学会、連携法人会員の先生方のご支援、ご指導を何卒よろしくお願い申し上げます。

 
 
 
 
 
2023年1月1日 
日本脳科学関連学会連合 
代表 高橋 良輔