会長挨拶

 人類は脳の進化に伴って、高度な情報処理能力を構築し、ヒト固有の言語、知能、思考、感情などを獲得することで、社会、経済、文化などを発展させてきました。この神秘的で素晴らしい脳の機能は大変複雑で、その本質に迫ることはこれまで難攻不落と思われてきましたが、近年の脳科学の進歩は著しく、理学、工学、人工知能やコンピューターサイエンスなどと融合することで、そのメカニズムの解明も急速に進展しつつあります。また、人文社会科学と連携することで「こころ」の問題にもアプローチすることが可能となり、精神・神経疾患の病態解明や新しい治療法開発などへの貢献も期待されています。

脳機能の全容解明を目指して、米国では「Brain Initiative」が、EUでは「Human Brain Project」が2013年からスタートしました。わが国でも、内閣府から「脳とこころの健康大国実現プロジェクト」が発表され、それに基づいて、脳科学研究戦略推進プログラム(脳プロ)、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)、戦略的国際脳科学研究推進プログラム(国際脳)などが展開されています。

脳とこころの機能解明の実現を加速するために、2012年7月1日に当時の日本神経科学学会代表の宮下保司先生からの「わが国おける脳科学に関連する学会が結集して、脳科学コミュニティーとしてのオピニオンを発信する必要がある」という呼びかけで国内の基礎・臨床脳科学関連の19学会が加盟し、宮下先生を代表として日本脳科学関連学会連合が発足しました。この活動は第2代目代表の水澤英洋先生(日本神経学会)、第3代目代表の岡部繁男先生(日本解剖学学会)に引き継がれ、そのリーダーシップにより本連合は順調に発展し、現在では28学会が加盟、会員総数96,098名に上る脳科学に関するわが国最大の連合組織に成長しています。

主な活動としては、脳科学将来構想委員会およびその作業部会において精力的な議論を重ねて、「神経回路レベルでのヒトの脳の動作原理の解明」、「国際連携データプラットフォームの形成」、「バイオサンプル、イメージングデータなどの多次元データ取得のネットワーク構築」などについて意見を集約し、革新脳、国際脳などのAMED研究費や日本学術会議の重点大型研究計画に関する提案をするなど重要な役割を果たしてきました。また、広報委員会では限られた予算の中で、脳科学豆知識、脳科学辞典などをホームページに公開し、一般に開かれた啓発活動も行っております。さらに、日本神経科学学会、脳の世紀推進会議などと連携して、国際脳科学オリンピック(Brain Bee)にも積極的に関与し、将来の脳科学を担う若手研究者育成のための活動も行っております。

この度、2018年6月8日に開催された第6回評議員会において、代表として日本神経精神薬理学会理事の山脇成人、副代表として日本神経科学学会理事長の伊佐正、日本神経学会代表理事の高橋良輔の各人が選出され就任いたしました。責任の重さを痛感しておりますが、本連合のこれまでの成果を更に発展させ、脳とこころの機能解明およびそれを通じた社会貢献に邁進したいと思いますので、皆様の温かいご支援、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

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2018年7月1日   
日本脳科学関連学会連合   
代表 山脇 成人