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脳科連バイマンスリーメールマガジン 2023年3月号(No.17)
http://www.brainscience-union.jp
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日本脳科学関連学会連合会員学会・連携法人会員及び評議員の皆さま

バイマンスリーメールマガジン2023年3月号(No.17)をお届けします。
お手数ですが、貴学会内の会員の皆さまへのメール配信をお願い致します。
❏今号のコンテンツ
・脳科連前代表のご挨拶:伊佐 正 前代表
・庶務幹事のご挨拶:松井秀彰(新潟大学脳研究所)
・脳科学オリンピックについて: 奥村 哲 脳科学リテラシー委員
・第16回リレーエッセイ:加藤忠史(日本生物学的精神医学会理事長)
・第31回日本医学会総会のご案内
・活動報告(2~3月)
・事務局だより

【脳科連前代表のご挨拶】
日本脳科学関連学会連合・前代表(日本神経科学学会、京都大学医学研究科)
伊佐 正
 昨年末をもちまして、脳科連の代表を任期満了にて退任致しました。「次期代表」の制度を導入したため、半年延びて2年半の任期となりましたが、その間、ご支援いただきました副代表、運営委員、代表補佐、評議員、各種委員会委員、そして事務局の皆様に深く御礼申し上げます。
10年余り前に「役所にコヒーレントボイスを発出するための組織」として発足した脳科連でしたが、近年、脳科連として行う仕事が急増してきました。私の期になって行ったこととして、まずは事務局をそれまでボランティアとして支えてきてくださっていた理研の脳センターから他に移す必要が生じました。そこで幸い農学会様に依頼することができましたが、必要経費が増加することとなりました。そこで収益体制を良くする必要がありましたが、単に会費を値上げをするだけでは、会員学会の中には脱退される学会が出てくるかもしれません。そこで改めて、会員学会の皆さんに脳科連の存在と意義を理解していただく必要があるという基本に立ち返り、隔月でメールマガジンを始めることにしました。幸いにも広報委員長の上田陽一先生(日本神経内分泌学会)が毎回大変素晴らしく編集をしてくださり、会員学会間のコミュニケーションが格段に促進されたと思います。
そして会費をそれまでの3万円から6万円に値上げをさせていただきましたが、ほぼ全ての会員学会が残っていただけたので胸を撫でおろしました。一方で産学連携を進めるために産学連携諮問委員会を立ち上げました。その過程では、各学会が行っている産学連携との関係や、そもそも学術団体の連合である脳科連が産学連携を推進すること自体にも、様々なご意見をいただきました。ここでは池田和隆先生(日本神経精神薬理学会)が実に丁寧かつ活発にご尽力下さり、無事に諮問委員会が立ち上がり、また多くの企業にも連携法人会員になっていただきました。
現在5つのワーキンググループに分かれ、活発な活動が始まっています。今後ここでの議論と提案をもとに「実のある産学連携を推進する施策」が実行に移され、日本における神経科学分野での産学連携が大きく発展することを期待しております。一方で、代表は2年ごとに交代しますが、今後、発足時の経緯などを必ずしもご存知ない様々な方に代表になっていただくことになると思われますので、「次期代表」という半年間の準備期間を取っていただくこととし、そのために極めて例外的に私の任期を半年延長し、次期代表になられる高橋良輔先生(日本神経学会)には一緒に代表の仕事を経験していただきました。また、それぞれの会員学会に比して、脳科連の執行体制は極めて脆弱で、その分、代表の業務量の負荷が大変であることを実感しましたので、庶務幹事と会計幹事を代表に選んでいただき、代表を補佐する体制も構築しました。この一連のプロセスは準備不足でかなりばたばたと行ってしまいまして、大変申し訳ありませんでした。
改めてお詫び申し上げます。
 そして後半のハイライトは、次期の脳科学のプロジェクトを設計するために立ち上げられた文部科学省ライフサイエンス委員会の脳科学作業部会で、研究者コミュニティの声を集約して述べる
役割を受け賜ったことで、これについては将来構想委員長の花川隆先生(日本臨床神経生理学会より推薦)に意見の集約に大変なご尽力をいただきました。これについては、ある程度うまくいったようで、現在今年夏の概算要求に向けての案作りが進んでいると伺っています。それに加えて日本学術会議の「未来の研究構想」についても、花川先生にご尽力いただき、「脳型重層研究網と個別化医療システム網による統合知が導く多様な個の脳・こころと環境のウェルビーイングが共存する「和の社会」設計構想」という案をまとめて提案することができました。こちらはまだ学術会議において次のステージについて審議が行われていると伺っています。また、コロナ禍で国際大会が対面で行われてこなかった脳科学オリンピックですが、こちらも奥村哲先生(脳科学リテラシ-委員会)のご尽力で着実に参加者を増やしてきております。コロナ後となる今年の国内選考そして国際大会が楽しみです。
 このように、発足当初に比して各学会独自に行われている様々な事業に加えて「脳科連として連携して行っていく」事業の重要性に関する会員学会間の共通の認識が高まってきたように思います。これは本来望まれてきたことですが、まだできていないことは多々あります。これまでご提案いただきながらも未だ十分に検討できていないこととして、「脳科連による国際誌の刊行」や「脳科学エデュケーター制度」に関する案件等が残されていますが、これらについては次期以降に持ち越させていただきたいと思います。
 このように多くの方に支えられまして、宿題を多く残しながらも、無事任期を務めることができましたこと、改めて皆様に御礼申し上げます。残念だったのはコロナ禍のためオンラインでしか会議を開くことができず、会員学会の先生方に交流していただく機会を提供できなかったことです。が、今後対面とオンラインの会議をうまく使い分け、脳科学分野における異分野連携が一層進んで、日本の脳科学が益々発展することを願っております。
 以上をもちまして退任の挨拶とさせていただきます。有難うございました。

【庶務幹事のご挨拶 】
脳科連庶務幹事:松井秀彰(新潟大学脳研究所 教授)
 このたび、脳科連庶務幹事にご指名をいただきました新潟大学脳研究所の松井秀彰です。
髙橋代表をはじめとした皆様による脳科連の運営を円滑に進めるお手伝いができますよう、事務局や会計幹事の神戸大学 古屋敷先生とともに頑張って参ります。
 自己紹介をしておきます。脳科連所属の学会ですと私は日本神経科学学会と日本神経学会の会員です。先日、日本神経科学学会の評議員に選んでいただきましたが、それまではいずれの学会においても一会員の立場です。そういうわけでまだあまり学会連合や学会運営に明るくありません。先生方皆様にはご迷惑をおかけすることと思いますが、幸い髙橋代表や事務局あるいは古屋敷先生とは頻繁に連絡を取ることができておりますので、運営をお手伝いしながら同時に学会や学会連合のことを勉強している最中です。
 もともとは神経内科医で、髙橋代表が京都大学神経内科の教授にご就任されまだできて1年ぐらいの研究室で博士課程を開始しました。そこで小型魚類を神経難病の研究に利用し、そして今に至るまでずっと小型魚類を活用してきています。現在は新潟大学脳研究所で脳病態解析分野という研究室を主宰し(https://www.bri.niigata-u.ac.jp/field/neuroscience/matsui/index.html)小型魚類だけでなく、培養細胞からマウス、ヒト剖検脳まで様々な研究対象を扱うようになっています。しかし、私の研究の基礎は髙橋代表と小型魚類そして博士課程入学までの住友病院に育てられたものです。不器用な私にとっては基礎研究に専念するだけで大変ですので、博士課程卒業後は臨床業務は外勤や非常勤も含めて行っていませんが、常に基礎と臨床を念頭に置いて研究を進めています。
 こんな感じで魚なのかヒトなのか、基礎なのか臨床なのか、まるでコウモリのように立場がはっきりしない研究者なのですが、その中途半端な立ち位置も場合によっては脳科連の運営補助に活かせるかもしれないと思っています。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

【脳科学オリンピックについて 脳科学オリンピック国内予選(令和5年度)実施計画】
脳科学リテラシー委員・脳科学オリンピック日本ナショナルコーディネーター
奥村哲(玉川大学脳科学研究所)
報告事項
1.第10回脳科学五輪日本大会(2023年大会)の予選大会は2023年4月1日(土)~16日(日)の日程で、全国47都道府県、200カ所以上の実施会場で分散してCBT方式で実施いたします
2.日本代表選抜大会
予選を通過した入賞者(数名)については、5月中に対面で行われる日本代表選抜大会に進み、その優勝者1名は、8月に開催予定の世界大会に日本代表としてノミネートされます。なお本年は世界大会もオンライン開催となることが決まっています。
3.上記の予選通過者(数名)については、日本神経科学学会大会(仙台)に招待するとともに、ラボ見学、脳科学講座などの参加の機会を用意します。詳細については日本脳科学関連学会連合のWebサイトをご参照ください。
http://www.brainscience-union.jp/brainbee/brainbee2023

日本脳科学関連学会連合への要望
今後も、脳科学五輪日本プログラムの充実のため、会員学会におかれましては、寄付金のご提供、関連イベント実施のご相談、さらには可能であれば、人的支援につき、ご協力の程よろしくお願いいたします。また今後の告知のためSSHなど感度の高い高校や、興味をもってくださる高校教員ストを作成しています。これについて、加えた方が良い先生などをご紹介頂ける方は、取りまとめの奥村(tetsuok@lab.tamagawa.ac.jp)にお知らせください。

【第16回リレーエッセイ】
日本生物学的精神医学会理事長 加藤忠史
 精神疾患は社会的に影響が大きな疾患です。しかし、今のところ、診断は面接に頼っており、治療薬は、1950年代に偶然に近い形で発見されたものの改良版が中心となっています。精神疾患の原因を解明し、病態を直接治療するような治療法の開発が喫緊の課題です。
 脳科学関連学会連合の方々には、生物学的、という名前が不思議に響くかも知れませんが、この学会名はBiological Psychiatryの略で、1979年に世界生物学的精神医学会連合の下部組織の研究会として誕生したことに由来しています。なお、創設時の会員数は120名であったそうです。精神医学は非常に幅が広く、社会精神医学、司法精神医学、リエゾン精神医学、産業精神医学、精神病理学、病跡学など、人文・社会科学系の領域まで含む、広大な領域であり、精神医学研究を担う精神神経学会の中でも、脳、ゲノム、細胞などを対象として、生物学の手法を用いて行う研究は、ごく一部に過ぎません。しかも、その精神神経学会が1969年以後、長い間、政治的な活動の場となってしまい、研究が困難となっていました。その間、研究の火をともし続けたのが本学会でした。
 1984年に学会に移行し、1997年には会員数は1648名を数えました。2022年5月現在、会員数は1178名となっております。現状では、そのうち多くを精神科医が占めており、生物学的研究を行う精神科医と、臨床的観点を重視する基礎研究者の集う場となっています。
 現在、理事長は精神科医である加藤が勤め、副理事長はPhD研究者である岩本和也教授が務めています。
 本学会は、過去10年にわたり、全ての大会を、日本神経精神薬理学会、日本神経化学会、日本臨床精神神経薬理学会などとの合同大会、あるいは連続開催という形で行ってきました。
今年、2023年は、岩田仲生大会長のもと、久々に単独大会を行いますので、これを学会のあり方を見つめる良い機会にしたいと考えております。2024年には、山末英典大会長のもと、打って変わって、日本神経科学学会、日本神経化学会との合同大会を予定しており、これを機に、精神疾患の神経科学的研究の機運が更に高まることを期待しております。
 学会活動の最大の特徴は、2012年より毎年行っている「若手研究者育成プログラム」です。応募者の中から、奨励賞、最優秀奨励賞受賞者を選考しています。これまでの最優秀奨励賞受賞者は、全員がその後PIに成長しており、将来計画委員になっていただいて、学会の担っていただいております。
 近年の神経科学の進歩と、精神・神経疾患研究へのファンディングに伴い、脳科学領域で、精神疾患解明の機運が高まっていると感じています。
 本学会で、現在盛んな研究領域としては、大規模ゲノム研究、大規模MRI研究、新規治療法の開発研究、モデル動物を用いた神経回路解析、新規バイオマーカーの探索、ゲノム・MRIなどのデータを元にしたデータ駆動型研究などです。また、数理神経科学的観点で精神疾患に取り組む計算論的精神医学への関心も高まっています。
 日本生物学的精神医学会では、精神疾患研究に関心を持つ全ての研究者の方々のご参加、ご入会を歓迎しておりますので、どうぞお気軽にお声かけ下さい。

次回のリレーエッセイは日本神経精神薬理学会の大隅典子先生にバトンタッチされます。

【第31回日本医学会総会のご案内 】
第31回日本医学会総会2023東京 https://isoukai2023.jp
【活動報告(2~3月)】
・第32回運営委員会(拡大運営委員会)(2月16日)
・第3回産学連携諮問委員会(3月8日)
・第27回評議員会(3月30日)
・脳科連産学連携諮問委員会主催の講演会(3月31日)

【事務局だより(主に会員学会事務局向け)】
・評議員の変更がございましたら、事務局までご連絡をお願いいたします。
・メールマガジン内容へのご意見やお問い合わせは、貴学会の事務局経由でお願いします。

(代理発送)
日本脳科学関連学会連合事務局
office@brainscience-union.jp
URL:http://www.brainscience-union.jp/
〒113-8657 東京大学農学部内
TEL: 03-5842-2210 / FAX: 03-5842-2237